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幼児教育ロシアの教育心理学者ヴィゴッツキーは、「感覚運動的思考と言語的思考が合流するのは
2歳くらいからで、感覚運動的思考のほうが歴史が古い」と言っています。
これは、おおよそ100年くらい前の話で、
行動主義心理学が風靡していた時代に進化論的発想をしています。
グリーンスパンは「子どものあそびは進化の産物である」と言い切っていますが、
こうした考えはこの20〜30年の間で出てきたようです。
グレアムグリーンが『動物に心があるか』というセンセーショナルな著作を出したのが
1980年代くらいではなかったかと思います。
赤ちゃんの脳は、生まれたときは白紙のようなもので、環境からの刺激によって形成されるという
考え方は、現在も根強く残っていて療育や早期教育の中で生きています。
感情を無視した行動主義は、当然『動物に心がない』という前提になっていたようですし、
その影響で動物の心、人間の心全般についての研究も停滞していたようです。
『心とは何か?』これは難しい問題ですが、グリーンスパンはASDの特徴として、
感覚情報と運動出力が近接していることをあげています。
これは典型的には、爬虫類や下等な哺乳類などに見られる行動パターンで、
視覚情報に食料となるものが入ると、素早く捕獲行動に移ります。
思考している間に逃げられてしまうということでしょう。
こうした行動パターンは、7〜8ヶ月の赤ちゃんでも見られます。
3〜5ヶ月の赤ちゃんの追視を見てみます。
赤ちゃんの目の前20cmぐらいで、ガラガラを左右にゆっくり動かします。
上手にできたら上下に動かします。検査ではないですから、楽しくしてくださいね。
それから右回り、左回りをします。ガラガラの移動に沿って赤ちゃんは視線を移動していきます。
ここでは、視覚情報入力と運動出力が連動していて、「・・・ん?」という隙間がありません。
7〜8ヶ月のハイハイをする赤ちゃんも、目の前に興味深いものがあれば、
視覚情報に促されるように接近していきます。
ただし、6〜7ヶ月のお座りができる赤ちゃんで、両手に持った物を『見比べる』ことがあります。
コトバにすると「これはなんだ?」というより「どうしよう?」という感じですが、
「・・・ん?」という思考の隙間が開いたようにも見えます。
田中昌人・杉江の研究では、『二つの窓』というコトバで着目されていますが、
チンパンジーには見られない行動だということです。
ベック社から出ているクネクネバーンという玩具があります。
斜めの坂が左右になっていて、小さいクルマがカタカタ音をたてながら降りてきます。
下に降りたクルマをどうするか?9〜10ヶ月の赤ちゃんに見せてみました。
9ヶ月以前の赤ちゃんですと、ほとんどが掴んで口にもっていきます。
9〜10ヶ月になってくると、手にしたクルマを本体につけようとします。
それは、問題解決には至りませんが、「・・・ん?」のような、思考の隙間のようなものが感じられます。